●『酒乱』のリレー詩
第二回 第四走者
アエールαηρ
「わたし」と「あなた」の近似値に
ゆらめくもののあおさがこんなにも
いとおしいのはなぜだろう 風のち
かさ みずのちかさがひろがってゆ
くのをかんじながら」
みずを読みちがえてふみまよう場所が
あるのだとして
時間もまた読みちがえられているんだろうと
ゆらめく坂
を
自転車でおりてゆくとみずくさのむこうにゆうぐれの街が
みえる ゆら
ゆらとおりてゆくと
なまえのないあなたにであえるのだろうか
すいりゅうの
わずかなゆがみをすかしてとおく
みえるもののとうめいな残像がなつかしくてたまらないのは
なぜなんだろう
街もあなたもちかしいようでとおくて
そのとおさはけして埋められないものだと感じて
いるのは
まさしくただしい、
(風はみずのなかにはない)
読みちがえたもののすべてがちかしいものをとおくして
わたしは
坂道を
おりつづけてゆく
©shuran