●『酒乱』のリレー詩

第二回  第二走者



粒子

今唯ケンタロウ

し、

潮騒、

、……花は 何処かとても高いところに咲いているではないか、

一本だけの、 名も知らない、花、……、

あの岬から、 、

緩やかにわたしは、降りていく、ゆっくりと、落ちて、ゆく、……、 、

やがて聞こえなくなる

、し、

し 潮騒の、



静かだ、これほどまでに静かであったのか

し……、わたしは…… ……

し…………

やがてそっと包まれる暗闇に

しろいちいさなひとつぶの粒子を追って 手を伸ばし つかもうとするけど

わたしはすでに

わたしなのか わたしでないのか 確信とも未確信ともつかぬ不確かさのなかで

途方もない不安と 得体の知れない安らぎとにおいて

奥深く 奥深くへと

何処までも伸びていくこの黒い巨きな坂をただそのあるがままであるように降りてゆく

いつの間にか

しろい粒子は

あたり一面に輝いて

わたしもそのひとつであるような そのすべてであるような

ああ そうだ

何処かで花が咲いているな。と思う。

ただそう思う。

そう言えば、ここにはずっと歌が響いて、帰ってきたということなのかしらと。

暗がりであって

光であって

わたしであって

わたしでなくて

静かで

なのに歌に満ちていて

喜びも

寂しさも

悲しみも

喜びも

喜びも


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