●『酒乱』のリレー詩
第一回(第七走者 来住野恵子 二〇〇九年三月十七日)
海の言
ふたつの眼をもつ生きものは
何でもふたつに分けたがる
かたちのないぼくのからだにもことばの線をすっと引き
あの線のむこうは光それとも闇
この線のてまえは生あるいは死
ぼくにはどちらだっておなじこと
水だからね
切れない割れないこわれない
はじめもおわりもみないっしょくたにつながれて
いつもひとつ、いつも全部さ。
目を閉じてごらんよ
きみのなか 刻一刻生滅するぼくの呼吸ぼくの
うたうとき恋するとき
ぼくはきみをめぐり宇宙を運ぶ
嘆くとき祈るとき
どんな視線も届かないひかる鼓動をきみに伝える
いつの日かきみがきみのかたちを失っても
ぼくの刹那すべてにきみがいる
まるごと息吹でいる
©shuran