●『酒乱』のリレー詩
第一回(第五走者 湯川紅実 二〇〇八年十一月三十日)
水の天井より
いつのまにかきみは水の中にいた
かつて水平線を割いてずっと深くなめらかな
輝く水の間をくぐっている
三半規管をほどくがごとく
たゆたうきみは孤独を語った
いつのまにか水辺をこえ
あらわになる砂地から
いつか帰ってくる
といい
離れて久しく、ゆえに近くにいたひと
きみがみた水天井はきっとどこまでも輝き
そして孤独など知らない
水鳥の影が幾度か
水平線の一部をおりなす帯に影を映し
結局は無数の反射する光の集合体であったのだろう
海底より続く砂地の凹凸をつつみこむ水より
あふれるその一点の光を選ぶとき
わたしもまた
水を想い
その空を見上げるはずだ
©shuran