●『酒乱』のリレー詩
第一回(第三走者 伊藤浩子 二〇〇八年十月十七日)
蜃気楼、その接線の揺れる水平線
ふれたという直感がどこまでも伸びてゆく
日曜日に ほら ミュール 赤い円周の
あなたの歩調に遅れまいとして
歌い掛けたメロディをまた海に戻すときに
接線は傾いたのかしら 教えて
花寒の弥生 結界 朝まだき
今でもきっとあなたに続いている
水平線よりも長い日曜日の午後の
錯角に似た角度から映える光
贈りものだと叫び声は
耳に降る細やかな雨の予感に
ふれてと小さくつぶやきながら
わたしたちはずっとこのまま
このままで誰よりもしあわせになれるから
あなたの横顔とゆびさきの行方を今夜も思う
蜃気楼、その接線の揺れる水平線の遠い約束
花寒の
消えかかる風景もあると
©shuran