●『酒乱』のリレー詩

第一回(第一走者 小川三郎 二〇〇八年九月二十七日)



蜃気楼

小川三郎

あなたはいくつも水平線を自作し

その光について説明した。

水平線は影を作らず

そこに死の効力はなかった。

このように世界は傾いていくとあなたは言った。

そんなこと口に出すもんじゃない。

そこに起き上がるものの明確さを

言ってはいけない。

沢山の目が現われているとあなたは言った。

それらは全部、光を背にして、

ひとつも輝いていないのだと。

私はその意味を理解したが

絶望に手を貸せるほど繊細ではなく

油絵の具を差し出すことがせいぜいで

あなたはそれを使い埋め尽くされた時間を別の形に組みなおし

注釈をつけた上で崩れぬよう保存した。

その土台としての水平線。

人の体裁をとっていたあなたにもまた影はなく

永遠については興味がないというように

そこに歌などつけなかった。



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